研究概要 |
平成21年度の研究では,まず,酵母の細胞分裂に関係する主要な6つのタンパク質から構成されるタンパク質ネットワークの動的振る舞いを表現する6次元の非線形微分方程式を化学反応論に基づいて導出し,平成20年度における提案手法を適用することにより新たに推定される未知ネットワーク結合の役割をロバストネスの観点から理論的に明らかにした.具体的には,感度解析手法を適用することにより,酵母の細胞分裂ロバストネスを上させるネットワーク結合が存在することを明らかにし,細胞内に推定されたネットワーク結合の存在の可能性を示唆することができた.また,逆にロバストネスを低下されるネットワーク結合の存在も予測され,これにより細胞分裂の繰り返しにより増殖する癌細胞を効果的に抑制する制御方法の可能性を示唆することができた.さらに,平成20年度における提案手法の有効性を検証するため,酵母の細胞分裂に関連する9つのタンパク質を対象とし,そのタンパク質ネットワークを推定した.その結果,従来の研究結果では未知であるいくつかのネットワーク結合の存在の可能性が示唆された.また,タンパク質ネットワーク結合が時間に依存して変化することを同定する新たな時変システム同定手法の提案をおこない,ネットワーク結合の時間変化を予測可能とすることができ,細胞分裂に関連するタンパク質の時間的な振る舞いを理解することの可能性が示された.ノイズを考慮した場合の提案手法の有効性も検証した.
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