研究概要 |
本年度は,これまでに取り組んだハイブリッドシステムの制御に関する結果を,確率システムへ拡張することを検討した.具体的には以下の研究に取り組んだ. (1) 確率ハイブリッドシステムの制御 一般的な確率ハイブリッドシステムの場合,連続ダイナミクスは非線形確率微分方程式,離散ダイナミクスは確率有限オートマトンで表現される.しかしながら,解析や設計の計算が煩雑となることから,本研究では連続ダイナミクスを離散時間線形システムに限定し,モデル予測制御則の導出を行った.この場合においても,システムの故障を考慮した制御などさまざまな応用が考えられる.提案する制御則では,離散状態(モード)の時系列に着目してモデリングすることで,計算の効率化を図っている. (2) 確率ブーリアンネットワークの制御 確率ブーリアンネットワークは遺伝子ネットワークのモデルの一つであり,確率的な離散ダイナミクスの一種である.また,確定的なブーリアンネットワークでは考慮できない雑音の影響を扱うことが可能である.最適制御問題の従来解法においては,確率ブーリアンネットワークを離散時間マルコフ連鎖に変換する必要がある.しかしながら,この変換は遺伝子数に関して指数時間の計算量を必要とすることから,大規模な遺伝子ネットワークへの適用が困難である.この問題を解決するために,本研究では整数計画法を用いた解法を提案した.提案手法では,離散時間マルコフ連鎖への変換が不要であり,大規模な遺伝子ネットワークへの適用が可能である.実際に,従来手法では計算が困難な規模のシステムに対して計算が可能であることを,計算機実験により示した. 以上の成果は,雑誌論文や国際会議に投稿中である.
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