研究概要 |
本年度はまず,従来までの二乗和による成果をアクロボットの姿勢制御のための制御系設計を通して検証することをおこなった.このような試みは,実用性を検証するうえで重要である.二乗和の成果をそのまま適用する場合,いくつかの困難に直面する.一つは,多項式以外の関数が制御系設計に存在すること,制御性能を向上させようとする場合に計算量が過大となることである.これらの困難に対処するために,アクロボットの制御系設計においては,物理モデルに現れる三角関数を適当な次数で打ち切り,各状態量の特性を考察することで設計モデルの大幅な簡略化を試みた.また,二乗和によって得られる制御性能を本質的に変えずに定式化における計算量の低減化を試みた.具体的には,二乗和条件からアクロボットの角速度を表す変数を排除すること,拘束条件の表現を工夫して二乗和マルチプライアの数を減らすこと,Schur補題を用いて行列値二乗和マルチプライアのサイズを減らすこと,である,これらの低減化の効果を最終的に解かれるべき半正定値計画問題に現れる半正定値拘束のサイズを評価することで示した.ところで,関数の近似の際に切り捨てた項については,厳密に考えればシステムの安定性に影響を与える.このことを調べるために,おもにメカニカルシステムを想定して,打ち切りによる安定性の影響を調べる研究に取り組んだ。具体的には,テーラー展開による打ち切り次数とその剰余項の上下界から,ロバスト安定解析のための条件を導いた.以上の制御系解析および設計では,対象は非線形システムでも線形なゲインを扱っていた.しかし一方で,数値計算と数式処理,とくに限量記号消去法(QE)を併用することで,非線形なゲイン解析に有効であることがわかってきた.ただし,直接QEを適用することは困難であるため,数値計算である二乗和の手法でゲイン関数の構造の存在を検証した後,QEを適用することが必要となる.
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