研究概要 |
昨年度は,一台のカメラマニピュレータと作業をおこなうための作業マニピュレータが複数台からなるシステムに対して非線形の微分方程式でモデリングし,さらに受動性に基づいて提案した制御則との閉ループ系に対して安定性の検証をおこなった.しかしその安定性の解析では,ある特殊な場合において,目標相対位置姿勢との間の偏差(制御偏差)と他のマニピュレータとの間の同調の偏差(シンクロ偏差)が相殺されてしまい,制御目的が達成されていないときが生じていた.本年度は,前年度の安定性の解析に加えてゲルシュゴーリンの定理を用いることで,前年度提案した制御則がそのような特殊な場合においても制御偏差とシンクロ偏差が個別にゼロになり,制御目的が達成されることを証明した. さらに提案する制御則を検討するために,計算用のソフトウェアであるMATLABとSimulinkを用いて,三次元シミュレータを作成し,提案した制御則の有効性を検証した.本同調制御則を適用させることで,従来研究でおこなわれていた同調要素を考慮しない制御よりも同調する速度が速くなることが確かめられた.また,特にある数台のマニピュレータに外乱トルクが入れられた場合,本制御則ではシステム全体に対する偏差の影響を著しく抑えられることがシミュレーションを通じて確認できた.この意味において,本制御則は従来の制御則よりも外乱に対してロバストな制御則になっていると言える.
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