平成22年度においては、これまでの研究成果であるロボットのダイナミクス補償に基づく高精度モーション制御系及び位相ずれの少ないノッチフィルタを用いた振動抑圧について更に研究を進めた。先端位置振動を抑圧するための指令値生成手法として新たに低次元化零位相ノッチフィルタ及び終端状態制御法に基づく手法を用いることで、さらなる高性能化を実現した。最後に、提案する振動抑圧手法が様々な動作条件に於いて有効であることをシミュレーション及び実験により確認した。 これらのシミュレーションでは、ロボットの先端に負荷がある場合と無い場合に於いて、先端軌跡の停止振動の大きさと整定時間の長さについて検証し、整定時間が短い場合に停止振動の悪化を最小限に抑えられていることを確認した。ノッチフィルタの設計には、制御系の伝達特性の共振周波数を中心周波数として用いた。零位相ノッチフィルタの低次元化のために、カットオフ周波数を調整した、低域通過フィルタと広域通過フィルタを組み合わせる手法を実現する。終端状態制御法では、制御系の伝達関数に着目し、制御対象のジャークがもっとも小さくなるような制御指令作成手法を新たに構成することで、停止時の振動が少なく整定時間が短くなるモーションを実現している。 本研究成果により、産業用ロボットの位置決め安定性と応答速度の両立が可能となり、生産ラインでの歩留まり向上やタクト時間の短縮に対して大きな貢献が可能となる。
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