路面損傷の進行を予防し、道路利用者に安全・安心な路面を提供するためには、発生源となる車両の振動を抑制する必要がある。車両の振動は、路面凹凸の波高・波長が同程度でもその形状に差異がある場合、異なる発生傾向を示すことがある。乗員に及ぼす悪影響が懸念されるため、速やかに補修しなければならない場合がある一方、将来的には補修が必要だが、緊急性はない場合もある。段差を含む路面の縦断プロファイルは、維持管理目的のデータベースが十分に整備されておらず、道路パトロール車両による定期巡回及び利用者からの通報など主観に基づく管理がなされている。本研究は、車の振動データを利用して、路面上に局在する路面凹凸形状から道路利用者の安全・安心感に悪影響を及ぼす凹凸形状を自動検出する方法を開発する。具体的には、道路管理者が所有する道路パトロール車両に加速度センサを取付け、定期的な巡回パトロールに合わせて振動計測を行い、走行安全上あるいは乗り心地上問題となる波形及び損傷の「予兆」・と思われる波形を検出した場合に自動通報するシステムを指向する。このシステムが実用化されると、交通走行路のメンテナンスの本来あるべき姿である"計画主導型の予防保全"へのシステムチェンジ実現に貢献できる。平成20年度(初年度)は道路パトロール車両で計測した車両振動データから路面損傷の予兆となる「損傷の卵」を発見・除去するためのフロー構築を主体とする研究を実施した。具体的には分析モデル区間を設定し、この区間を走行する車両の運動(xyzの3軸方向加速度+各軸まわりの角速度)を計測すると同時に、乗員の乗り心地評価を実施した。この結果、道路利用者が「不安」あるいは「危険」と感じる凹凸波形(ターゲット)を複数抽出することができた。
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