研究概要 |
脱塩工法とは, 電気化学的防食工法のひとつで, コンクリート内部の鋼材に, 外部に仮設した陽極を通じて直流電流を流すことにより, コンクリート中に存在する塩化物イオンを電気的に除去もしくは低減させ, 塩害による鋼材腐食を抑制することで構造物の耐久性を向上させる工法である. 同工法は実構造物にも既に適用され, 補修効果を有することが確認されているが, 脱塩性状に及ぼす影響因子およびその影響程度は必ずしも明らかにはされてはおらず, 従って, 設計体系および定量的な補修効果の予測手法が十分に整備されてはいないのが現状である. 本研究は上記の問題点の解決方法を提示するものであり, 社会基盤の適切な維持管理技術を提供するものである. H20年度に実施した本研究の内容は, 脱塩工法の予測手法の構築, 脱塩工法の設計および予測手法の入力データとして必要となるコンクリートの電気化学的特性値およびその評価手法の選定, である. 以下に, 主要な成果を示す. 1. 予測手法の構築について Nernst- Planck式とLaplace方程式を連成させたコンクリート中のイオン移動の数理モデルを検討し, FEM汎用解析ソフトを使用した三次元数値解析的予測手法構築した. 数理モデルの検証として, 電位分布の形状をシミュレーションし, 実験により得られた電位分布と比較することで, その妥当性を確認した. 2. 電気化学的特性値およびその評価手法の選定について これまでの研究成果, および本年度実施した実験的検討結果を踏まえ, 補修効果を予測するための特性値として, (1)塩化物イオン量とその分布, (2)電気抵抗率, (3)かぶり厚さ, (4)鉄筋の配置 (配筋状況)が重要であることが明らかとなった. また, 断面修復材を脱塩工法と併用する場合には, 断面修復材と母材コンクリートと電気抵抗率の比率と断面修復面積を明確にした上で補修設計する必要があることが明らかとなった.
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