研究概要 |
沖縄県は高温多湿で,かつ島嶼環境に置かれ,海から飛来する塩分(飛来塩分)による塩害がコンクリート構造物や鋼構造物に深刻な被害を与えている.そこで本研究では,沖縄県本島を対象に飛来塩分濃度分布および構造物周辺における飛来塩分濃度分布を予測・評価するために,3次元数値気象(気候)モデルと高精度な拡散モデル(ランダムウォーク法)を組み合わせたシステムのプラットフォームを構築し,これまで蓄積してきた観測結果などと比較し,本システムの精度検証および有用性の検討を行う. 本研究では,3次元数値気象(気候)モデルを用いて沖縄県本島の気象予測,その結果に基づいたランダムウォーク法による大域領域における飛来塩分の拡散解析,さらに局所領域における構造物周辺の飛来塩分濃度分布の計算を行うことで腐食環境予測・評価可能なシステムのプラットフォームを構築することを目的に行っている. 平成21年度は,前年度に構築した並列計算機6台を用いて3次元数値気象モデルおよびランダムウォーク法が融合できる環境を整備し,計算結果と観測結果を比較した.研究実績を以下に示す. 1. 本研究では,数値気象モデルとして,次世代数値気象モデルであるWRFの沖縄への適用性を検討し,精度,使用方法の簡便さなどを考慮し,MM5からWRFを使用することにした. 2. 飛来塩分が主に風向風速に依存することから,携帯気象観測データロガーを購入し,風向風速に関して観測値と計算値の比較を行い,比較的良好な結果を得た. 3. ランダムウォーク法による計算はそれぞれの粒子の移動で,移流・拡散を表現するため解析領域内の位置検索や地形や構造物との衝突・付着などの判定に時間を要する.このため,現在採用している高速検索アルゴリズムであるバケット法に加え,平成21年度は,衝突判定の軽量化および並列計算アルゴリズムを適用し,ランダムウォーク法の高速化を実現した.
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