研究概要 |
近年, 簡易な設計が困難な鋼コンクリート複合構造の結合部など複雑な構造を有する部位において, 有限要素解析による直接的な性能照査に対する要望が高まっている. 結合部の有限要素解析による直接的な照査を行うためには, 異種材料界面における付着・剥離・摩擦といった現象を精緻に再現可能な数値モデルが必要となる. これまで, 界面の数値モデルを構築するために, 押し抜きせん断試験などの要素試験によって付着特性の評価が行われているが, これらの試験においては界面せん断方向の境界部分で応力集中が生じることから, 付着力やせん断力-ずれ変位関係が正確に計測できていない可能性がある. そこで本年度の研究では, そのような境界面の影響を極力排除した要素試験を考案し, 付着力およびせん断力-ずれ変位関係の定量評価を試みた. そのために, 円柱型の鋼材の周面を, 直方体のコンクリートが覆った試験体を製作した. コンクリートを固定した上で, 丸鋼を円周方向に回転させることで, 丸鋼の側面とコンクリート間のずれ変位を測定する. この試験方法では,境界面が連続となるため, 界面せん断方向の境界が存在しないことから, 純粋な付着力が測定できると考えた. 試験の結果, 付着応力は, 支圧応力OMPaにおいて0.29MPa, 支圧応力1MPaにおいて0.72MPaとなり, 従来の押し抜きせん断試験の結果の25%から200%ほど大きな付着応力が計測された.このことから, 考案した試験により本来有している付着力とずれ変位の挙動を正確に測定できたと考えられる.
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