研究概要 |
放射性廃棄物の地層処分を考える上で,天然バリアとなる処分坑道周辺の岩盤の力学および水理学特性を長期にわたり評価・予測することは非常に重要である.処分空洞近傍では,廃棄体からの発熱により化学作用が卓越し,岩盤の力学・透水特性に大きな影響を及ぼすことが予想される. そこで本研究では,特に透水特性に着目し,拘束圧及び温度を制御した単一の亀裂を有する花崗岩の透水試験を実施し,透水特性の経時変化を観察すると共に,その変化に起因するメカニズムの解明を試みた.実験条件は,地下350mおよび700m程度を想定して,5MPaと10MPaの拘束圧で,また温度は室温条件の20℃と放射性廃棄物の発熱温度を考慮し,90℃の温度条件で透水実験を行った.透水試験の結果,20℃の温度条件では,実験開始と共に透水性は低下していくことが観察されたが,比較的短い時間で定常状態に達することが確認された.その後,温度を90℃に上昇させると,透水性は再び低下する傾向が得られた.これは,岩石を構成する鉱物の溶解現象に起因していると考えられる.そこで,鉱物の溶解・拡散・沈殿の一連の機構を記述できる概念モデルを構築し,実験結果を再現することを試みた.その結果,透水特性の変化は,作用する応力と温度に大きく依存し,90℃程度の温度条件でもその影響は大きいことが確認された.また,構築した解析モデルの有用性を確認した.
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