研究概要 |
感潮河川流域で石灰処理土をより合理的に利用するためには, 感潮河川水の浸透による劣化のメカニズムを解明し, 耐久性を適切に評価する方法を確立することが必要である. 本研究では感潮河川流域での使用を想定した石灰処理土の劣化メカニズムを明らかにするため, 石灰処理土の力学特性および化学特性及ぼす海水濃度ならびにその成分, 海水との接触時間の影響について検討した. 本研究で行った実験は, 塩分を調整した人工海水中に, 石灰処理土を所定期間浸漬させた後, 石灰処理土中の軟化の状態を調べるためのコーン貫入試験と, 石灰処理土中の化学成分の分布状態を調べるための蛍光X線分析を平行して行った. 一連の実験より以下の結果が得られた. 1. 石灰処理土に塩分を含む河川水が接触すると, 接触面から処理土内部に向かって軟化が進行する. 2. 軟化の進行の速さは海水濃度が高いときほど速い. 3. 軟化した領域では, 水和生成物の主要成分であるカルシウムが著しく減少する. 4. 軟化した領域では, マグネシウムがカルシウムの減少と対称的に増加する. 本研究では, 海水あるいは感潮河川水の浸透を受ける石灰処理土は軟化すること, そして軟化を引き起こす原因として, 浸透水の水質の主要成分である塩化ナトリウムではなく, マグネシウムを含む成分の影響が大きいことを明らかにした. これらの結果は感潮河川水流域において使用される石灰処理土, あるいは塩分を多く含む地下水と接触する環境下における劣化のメカニズムの端緒を得るとともに, 浸透水の水質が耐久性を評価するための重要な評価項目と成り得ることを示唆するものと考えられる.
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