研究概要 |
昨年度実施したセメント固化改良土と未改良土の複合体である固化体の載荷試験結果より,堤防の液状化による沈下対策を目的として液状化地盤を格子状改良し,内部の未改良土が液状化するときは堤防軸方向に直角な改良壁内に鉛直せん断破壊が発生することがわかった.今年度は,このような破壊モードを呈するときの改良土の応力-ひずみ関係を詳細に検討するため,改良土の非排水三軸試験を実施した.その結果,以下の事項が明らかとなった:(1) 未改良の場合,非排水せん断によりひずみ軟化傾向を示し,液状化するような土であっても,わずかなセメント(5%)を添加することにより,ひずみ硬化を示すような安定した地盤材料に改良することが可能である.(2) セメント添加後,通常の配合試験のように養生時の拘束圧が非常に小さい場合,その強度はせん断時の拘束圧に比例せず,ほぼ一定値を示すのに対し,実際の改良地盤のようにある程度の拘束圧が養生時に作用している場合(加圧養生の場合),その強度は拘束圧が大きいものほど大きくなる.(3) 養生時の拘束圧が非常に小さくても,その密度が加圧養生時のそれと等しい場合,剛性は加圧養生のものと比べて小さいものの,強度は加圧養生したものとほぼ同じであった.即ち,養生時の加圧による密度増加を別途評価できれば,通常行われているような低拘束圧下の養生であっても,加圧養生時の強度が推定可能である.以上の成果より,セメント改良土はせん断時にひずみ硬化を示すことから,特殊な構成モデルを用いなくても,ある程度その応力-ひずみ関係を表現可能であること,未改良土の圧縮特性が把握できれば,加圧養生による試験を実施しなくても加圧養生効果を踏まえた強度評価が可能であり,これにより既設改良体の強度評価が可能となったことが本研究の成果といえる.
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