研究概要 |
現在日本中の海岸で砂浜が減少し、大きな社会問題となっている. この研究は、変動帯に位置し、急峻な河川から土砂供給を受けるわが国の海浜環境の特徴である礫サイズの粒子を含む混合粒径場における土砂移動機構の解明および土砂移動予測の高精度化を目的とし, 礫の接触ネットワークに着目した実験と数値シミュレーションを行った. 具体的に実験では, 振動流水路に, 砂(平均粒径0.27mm)と礫(平均粒径7.3mm)を様々な比率で混合し, 土砂の移動特性を解析した. その結果, 礫の表面被服率が95%を越えると, 極端に土砂の移動が抑制されることが明らかになった, このような土砂の移動特性に対して臨界混合比が存在するメカニズムを解明するため, 個別要素法シミュレーションによる混合粒径球のパッキング計算を行った. その結果,粒径比が5の大小粒子を用いた場合に, 体積混合比約60%で大きな粒子同士の3次元的な接触ネットワークが無限大に発散し, 配位数が増加することが明らかになった. この体積混合比は実験の表面被服率とほぼ対応することが確認され, 土砂の移動抑制が大きな礫同士の接触ネットワークの発散および, 配位数の増加と関係していることが明らかになった, 本年度の研究の意義は, 混合比による混合土砂の非線形応答の存在を明らかにしたことであり, さらに重要な点は, そのメカニズムを解明した点である, 今後このメカニズムを元に, 実験やモデル化を行うことで, 定量的な土砂輸送の予測精度を向上させることができると考えられる.
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