研究概要 |
本研究は,任意形状や移動境界を高精度で数値シミュレーションできる埋め込み境界法(Immersed Boundary Method)を海岸工学分野に導入し,これまで困難であった防災や海岸事業に関連する様々な海岸工学上の問題をより短時間・高精度で解析できる国内外でもトップレベルの新たな汎用数値モデルを関発し,数値計算手法をより一層発展させることを目的とした.この研究を成し遂げるためには,波と構造物の相互作用を解析できるIB法のみならず,複雑な自由表面の変化を精度よく追跡する手法も重要となり,VOF法に基づいた自由表面追跡モデルを構築してきた.一方,IB法では計算領域内部の解析対象構造物による境界条件を満足させるため,流体の運動方程式に外力項を取り込んで計算を行うため,このような外力項をどのように評価するかによってモデルの特徴が決められる.平成20年度には,デカルト格子を構造物境界面でのラグランジュメッシュとリンクさせ,構造物の境界の影響を流体に外力として作用させて流体の境界条件を満足させるPVモデルを採用し,IB法に基づいたモデルを構築した.しかし,PVモデルでは,その構造が複雑になり,数値コードの作製や3次元への拡張性が困難であることが判明され,今年度では,簡便なIB法を新たに提案し,数値波動水路への適用を試みた.そして本モデルの妥当性を検証するため,半円形構造物周りの波動場の解析へ適用した.その結果,本IB手法は簡便ながら曲面を持つ構造物周りの波動場を効率的に従来のデカルト格子上で再現可能であることを明らかにした.本数値モデルは,既往のモデルでは困難であった曲面や任意形状を持つ構造物の情報の入力のわずらわしさや境界条件の取り扱いなどの課題を解決できる有効な物体と流体の連成解析モデルであるため,海岸工学分野において学術的にも工学的にも極めて大きな成果が期待できる.
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