研究概要 |
河川感潮域において治水と環境管理を両立するためには,地形と底質の形成過程を解明し,予測する技術が必要である.本研究は潮汐流に起因する地形・底質形成メカニズムを解明することを目的として,河床変動特性に関する長期的・広域的な検討と,底泥の堆積過程にスポット調査を実施した.調査地点は筑後川河口の感潮河道であり,得られた成果は以下の通り. (1) 2002年から2009年までに継続的に得られた測量・底質データを解析した.10.2~16kmの河床は非洪水期に泥質であったが,洪水時に1m程度低下して,半分以上の領域で砂質に変化した.その後,数ヶ月の間にシルト・粘土の堆積が進行した.この浸食・堆積現象はほぼ毎年生じており,河床にシルト・粘土と砂の互層が形成される原因となっている.砂層に近い部分のシルト・粘土は含水比が低く,圧密が進みやすい. (2) 河口から14km地点の河床にフレームを組み,濁度計,超音波流速計,河床面センサーを設置し,2週間にわたって河床の昇降状況をモニタリングした.その結果,小潮時には河床の変動は見られなかったが,中潮から大潮にかけて徐々に浮泥が堆積してゆく様子が捉えられた.半日周期の現象として,上げ潮では河床面が乱れて水中のSS濃度が急上昇し,満潮時にSS濃度が急減して河床面が上昇し,下げ潮では徐々に河床が低下していた.SS濃度と底面勇断応力の関係を調べたところ,小潮よりも大潮の方が同じ剪断応力でもSS濃度が高くなっていた.この原因として,小潮から大潮期にかけて底面勇断応力が増加してゆき,その応力履歴によって底泥が巻き上がりやすい環境が形成されると推測できる.また,泥の堆積が進行することで巻き上げられやすい層の厚みが増す事も原因と考えられる.
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