研究概要 |
本研究では, 空間を明示的に考慮した国際貿易の一般均衡フレームワークを用い, 国際産業立地パターンと自由貿易協定締結の意思決定を同時に考慮しうるモデルを構築し, FTAネットワーク形成メカニズム及び実現する均衡解の特性を明らかにした. 具体的には, 不完全競争下のN (>2)ヶ国モデルにおいて, 各国のFTA締結に関する相互依存的な意思決定をネットワーク形成ゲームとして捉え, ゲームの均衡として実現する貿易協定ネットワークと産業立地の空間的パターンについての分析を行った. その上, インフラ整備や輸送技術の進歩による輸送費用の減少がFTAネットワークおよび産業立地パターンに与える影響について分析した. 3カ国モデルを用いた数値シミュレーション分析の結果, 以下のことが明らかとなった. まず, 各国間の輸送費用が対称の場合, 各国間の輸送費用が大きいとき, 完全型ネットワークのみが安定であるが, 輸送費用が小さいきは完全型ネットワーク以外にも安定なネットワークが存在することが明らかとなった. なお, 各国間の輸送費用が非対称の場合は, 安定的な貿易協定ネットワークが様々な形状を取り得ることがわかった. また, 輸送費用と各国の社会厚生の関係については, 世界全体の平均の社会厚生は輸送費用によらず常に完全型ネットワークが大きくなるが, ブロック型から完全型へはパレート改善しないため, 社会的最適を実現する為には所得移転などの調整が必要となることがわかった.
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