住民運営型地域交通が成立する構造を明らかにするため、成立への行動意図とソーシャル・キャピタル(以後SC)について調査分析を行った。具体的には、住民運営型地域交通の成立への行動意図として、地域内で運行するバス交通を住民により運行することへの賛否意識を用い、SCとして、構造的SCとして5項目、認知的SCとして4項目を用いた。その結果、認知的、構造的SCともに住民運営型地域交通に対する賛否に影響を与えていることが明らかになった。しかし、社会参加への参加の有無は関係がないことが分かり、社会参加が盛んに行われている地域であったとしても住民運営型地域交通が成立するとは限らないことを示した。 地域運営型地域交通の成立を推進するため、ケーススタディ地域において、住民代表が集まる会合を20年度は4回開催した。その結果、実働を検討する地域住民の代表者の会議が自発的に立ち上がるなど、地域運営型地域交通の成立に有効に働くことが観測された。さらに、町の地域交通活性化連携計画の中に、地域運営型地域交通の支援メニューを整備し、財政面での整理ができた点も地域住民の活動を活性化し、成立に大きく寄与することが観測された。 兵庫県洲本市大野地区における住民運営型地域交通の先進事例が、利用者数が1便あたり5名と好評を得ていることが観測された。周辺地域の自治会長へのヒアリングより、当初、住民運営型交通の運行に消極的であった周辺の2地区においても、「住民運営型交通の提供を検討したい」との意向を把握した。これは、本研究で設定していた「地域にて、先行事例が生ずることにより、周辺にペネトレイション(伝播)する」という仮説の実証となった。 また、住民運営型地域交通のペネトレイションをすすめる運営協議会のあり方について、NPO等による福祉有償運送を題材に検討を行った。
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