(1) 住民運営型地域交通の成立可能範囲に関する研究 ケーススタディ地域で、住民を交えた地域交通の対策について議論する会議を開催し、住民運営による地域交通の運行方法を議論した。この議論の過程を分析することによって、議論のあり方について知見を得ることができた。加えて、住民運営型交通と市町村で実施される福祉的な交通施策との棲み分け、支援体制についての知見を得ることができた。なお、議論の結果、ケーススタディ地域では、需要応答型交通の実験を行うこととなった。需要応答型交通の運行が住民に与えた効果、その効果を認知することによる地域住民の反応の変化を把握することが次年度の課題である。 また、住民運営型交通の1形態である福祉有償運送について、運行にかかるコストを算出した。この結果、三重県伊賀市では、168~308円/km(車両の減価償却を考える場合、209~326円/km)であった。この知見は、住民運営型交通を整備した際のコストを算出することができ、住民運営型交通の交通システムとしての成立(経営的に成り立つ)可能な範囲を知るために有用である。 (2) 住民運営型地域交通のペネトレイションに関する研究 住民運営型交通の成立を目指す地域への情報提供を行った。感想等を分析した結果、遠方のより進んだ先進事例よりも、近辺の先進事例の情報に強く興味を抱くことが分かった。そのため、住民運営型交通をペネトレイションするためには、近隣地域において、先進事例を発生させることが重要であることが分かった。 また、戦略的ニッチマネジメントを元に、住民運営型交通の展開のあり方について整理した。その結果、一次学習として、(1)に示した住民運営型交通のある地域での運営方法や他地域への展開方法に関する知見の獲得、二次学習として、住民運営型交通を展開することが正しいかどうかを検討と位置づけることができた。
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