(1)住民運営型地域交通の成立可能範囲に関する研究 住民運営型地域交通の運行を参与型研究にて展開した。兵庫県佐用町江川地区にて2010年10月1日より「江川ふれあい号」の運行が始まった。6ヶ月間持続的に運行しており、1日平均約12名の利用者があり、住民運営型地域交通として、期待した性能を満たしている。この計画から運営に至る過程を、住民、行政、大学の3者における提案、意識変化を整理し、行政の支援および技術的支援の内容を明らかにした。 さらに、江川ふれあい号の計画・運営に関わった住民.利用者、その他の住民、行政にヒアリングを行い、江川ふれあい号が与えた効果および背負ったリスクを明らかとした。計画・運営に関わった住民は、背負ったリスクが大きく、住民運営型地域交通のペネトレイションを行うためには、計画運営に関わる住民を増加させ、一人あたりの負担を下げることが強く求められる。 三重県伊賀市にて、住民運営型地域交通の一つである福祉有償運送において、行政と協働の元、標準単価を元とした補助制度の検討を行った。行政支援が行われることにより、他地域では減少している運営団体が同市では増加しており、支援制度の効果を把握することができた。 (2)住民運営型地域交通のペネトレイションに関する研究 兵庫県内で住民運営型地域交通を実施する事例を収集し、その概要について収集整理を行った。その結果、兵庫県内では、16件の住民運営によるバスが運行されていることを把握できた。これらの事例について、近隣で展開される先進事例との関係をアンケートにより確認したところ、近隣の事例および他県の先進事例のレポートに触発され、事例の検討を受けたことが確認された。 以上から、本研究課題の住民運営型地域交通のペネトレイションを促進させるには、パイロット事業的に近隣で展開するとともに、その情報をアクセスできるよう収集整理を行うことが必要である。
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