研究概要 |
本研究は需要モデルを内包した動的な交通量配分理論(動的配分理論)を構築することを目的としている.この理論は,動的配分理論において外生的に与える必要がある需要パターンの一部を,需要モデルを組み込むことによって内生的に決定する枠組みを提供する.交通量配分問題を動的に扱うことは,交通量の持つ動的な特性を考えれば必須のことである.一方,その際の需要パターンをどのように知るかということは実務的応用の面から見た重要な問題点となっている.本研究では,この問題を解決するために,需要パターンに関する限られた情報から交通網の整備運用計画の評価する指標を推定する「需要モデル内包型の動的配分理論」を構築することを目指している.平成21年度は平成20年度に上げた成果をもとに,動的配分理論に適した需要モデルの構築を行った.交通需要を記述するモデルを構築する際に,社会ネットワークの概念を導入した.社会ネットワークを用いることにより,ある人と別の人が協同して同じ選択肢をとる行動や,同じ時刻(ピーク時刻)に多数の人が同一の目的地へ向かう行動を内生的に表現することが可能になる.このような需要モデルは,時間方向の集中が混雑の大小に大きく影響する動的配分理論に対しての親和性が高い.また,平成20年度から行っている動的配分理論のゲーム理論的アプローチともよく適合する.これらの需要モデルを,まず,混雑がない場合や,静的な交通ネットワークに対して適用してその特性をチェックした.その結果,需要の集中する現象をこれらのモデルで表現可能なこと,また,需要集中と混雑の双方の影響が均衡解の安定性に影響を及ぼすことがわかった.これらの成果をベースと誌,社会ネットワークをベースとした需要モデルを動的均衡配分の枠組みにとりこみ,その特性と,施策評価能力の評価を行った.
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