研究概要 |
本年度は, 地域特性や世帯のライフステージの違いによる政策反応の違いを考慮して, 車種選択から, 利用行動, 保有期間に至るまでの一連の行動を同時に取り扱うことができる統合モデルの開発を目的に, 以下の通り実施した. 1. 交通システムの整備水準や土地利用などの地域特性とライフサイクルステージなどの世帯の社会人口学的特性により, 世帯の自動車利用行動が異なるという仮説のもと, それらの影響を考慮した世帯の自動車利用ポテンシャルの算出手法の提案を行った. 分析の結果, 公共交通網や幹線道路網の整備状況, 世帯属性が, 世帯の自動車利用ポテンシャルに有意に影響を及ぼすことを検証した. 2. 複数の意思決定ルールを同時に取り入れた新たな世帯離散選択モデルの開発を試みた. 意思決定ルールとして, 加法型, max-min型とmax-max型を取り上げ, 各世帯がどの意思決定ルールをどの程度適用しうるかを潜在クラスモデリング手法の帰属確率より表現した. 車種選択行動を対象に行った実証分析の結果, 加法型とmax-max型の意思決定ルールを組み合わせたモデルの適合度がより高いことが明らかとなった. そして, 世帯の属性やライフステージの違いにより意思決定ルールが異なることも明らかにした. 3. 保有期間と年間走行距離の相互依存性を考慮するために, 2変量間の非線形な相互依存性を取り扱うことができるコピュラ関数を用いた多変量生存時間モデルを構築し, 保有期間と年間走行距離の同時決定モデルの開発を行った. 実証分析の結果, 利用行動と保有行動の間に負の相互依存性が存在することを明らかにした. また, 開発したモデルの現況再現性は従来の分析手法よりも高く, その有効性が実証された.
|