研究概要 |
本研究は, 持続的発展社会におけるバス路線網計画に寄与することを念頭に, バスをはじめとする公共交通ネットワークのサービスレベルをネットワーク解析手法に基づいた評価と, 多角的な視点から最適路線網を決定できるモデルの構築を行うものである. 研究初年度にあたる本年度は, 主に以下の研究を行った. 1. まず関連論文の収集・レビューと関係する学会・研究会へ参加し, 研究計画をさらに明確にした. 2. 先行研究で構築した乗客配分モデルをベースにした, 公共交通ネットワークにおいて運行頻度の低下にともない発生する積み残し乗客が安全面に及ぼす影響を評価するためプラットフォームの安全性満足度を積み残し乗客数の関数として定義し, critical lineおよびcritical stationを特定する手法論を構築した. さらにロンドン地下鉄ネットワークを対象としたケーススタディを行った結果, 提案する手法では積み残し乗客数で評価する手法と比べてプラットフォームの容量の小さい駅における危険度が高く評価されることが示された. 3. 従来の乗客配分モデルは車両到着を路線間で独立と仮定しているが, 到着に関する車両間・路線間の相関関係を表現できるようモデル開発を行い, いわゆる「団子運転」として知られている, 同一道路区間への車両集中にともなうバスサービスの定時性低下を表現できるようにした. さらに仮想ネットワークを用いた計算を行い, 車両到着の相関を考慮することにより乗客の選択経路集合が変化する場合があることを確認している. 4. 公共交通路線網決定モデルを, 乗客配分モデルを下位問題とする2段階最適化問題として定式化し, 解法の検討を行った. 仮想ネットワークを用いた計算を行った結果, 計算負荷が大きいものの想定された結果が得られることを確認している.
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