バングラデシュ、ナワブガンジ市近郊の集落において、住民から陰膳試料を集めヒ素濃度の分析をおこなった結果、調査地域住民のヒ素摂取は、飲料水からよりもコメからの摂取量が多いということが前年度の結果より明らかになった。この原因の一つとして、飲料水にはヒ素濃度の低い安全な水を使用するが、調理用水にはヒ素濃度の高い手近な水を使用する可能性が示唆された。そこで、住民の協力を得て、コメ調理用水にもヒ素濃度の低い水を使用してもらい炊飯前後のコメ中のヒ素濃度を分析した。その結果、コメ由来のヒ素摂取量が平均として0.10mg/dayから0.04mg/dayと6割の改善がみられた。特に、前年度において炊飯後のコメ中ヒ素濃度が大きく増加していた家庭において減少傾向が顕著であった。従って、飲料水だけではなく調理用水についてもヒ素濃度の低い水を供給することができれば、住民のヒ素摂取量をさらに減少させることができると示唆された。ただし、この割合は飲料水中のヒ素濃度を減少させることと比較すると小さい。また、コメにおいては、バングラデシュでは調理のみならず精米過程においても水を使用しており、この精米過程においてコメを煮ることによりコメ中ヒ素濃度が上昇することがわかった。このとき上昇するヒ素の形態は3価のヒ素が多かった。この精米過程においてコメ中ヒ素濃度上昇を防ぐには、地下水に共存している鉄を使用したヒ素の共沈によるヒ素の除去が有効であることがわかった。
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