下水消化汚泥からの重金属の溶出効率は、酸性条件での第二鉄や過酸化水素の添加によって向上するが、促進化法のについては検討されていない。そこで、pH2.5において、フェントン反応から生じる酸化剤による汚泥からの重金属の溶出除去について検討した。まずは、酸化剤として過酸化水素だけを添加する場合について、その添加量(0〜2%)の影響を検討した。汚泥からの重金属の最大溶出率は、カドミウムが約95%、亜鉛とマンガンが約85%、銅が約75%、ニッケルが約60%、クロムが10%以下であり、カドミウム、銅及び亜鉛は酸化剤添加量の増加に伴い溶出率が向上した。過酸化水素の最適添加量は亜鉛で0.1%、カドミウムと銅で0.5%であった。次に、上述のフェントン反応生成物が汚泥からの重金属溶出に与える影響と第二鉄によるリンの汚泥への不溶化を検討するために、過酸化水素添加の条件についてはその濃度を0.02%とし、第二鉄イオンを0〜1g/lとなるように添加し、pHを上述の2.5に調整して実験を行った。なお、酸化剤無添加、過酸化水素のみの添加ならびに第二鉄イオンのみの添加の条件についても検討した。第二鉄濃度が1g/lの場合、過酸化水素どの併用において、いずれかの酸化剤単独での添加と比較して、銅の溶出速度が最も速かった。本条件では、過酸化水素による第一鉄の酸化量が最も多く、実験開始直後のORPが最も高かったことから、フェントン反応によりヒドロキシルラジカルのような酸化剤が生じ、その酸化剤が汚泥中の銅化合物を分解し、銅の溶出を促進したと考えられる。一方、汚泥中のリンはpHの低下により、他の重金属と同様に約80%溶出するが、第二鉄濃度が1g/lの場合、溶出率を10%以下に抑えることができた。汚泥中に不溶化したリンの多くは植物によって利用可能な2%クエン酸溶液抽出可能画分であった。以上より、過酸化水素と第二鉄を添加するプロセスは消化汚泥甲の重金属溶出の向上とリン不溶化に適していることが分かった。
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