近年脱窒を伴い嫌気メタン酸化を行う微生物が報告されたことで、地球上の炭素循環や窒素循環におけるメタン脱窒の重要性を温室効果ガスの挙動の観点からも検討することが必要である。本研究では、淡水環境におけるメタン脱窒の重要性を明らかにすることを最終目的とし、第一段階として、河川底泥と嫌気性グラニュールをそれぞれ嫌気的条件下で硝酸とメタンを基質として与えて培養することでメタン脱窒反応に関与する微生物群集の集積培養を試みた。集積培養を試みながらメタン脱窒反応の活性化因子や脱窒メカニズムについても検討した。 回分培養サンプル中おける硝酸塩減少速度の経時変化(A)、メタン脱窒反応を仮定した場合に硝酸塩減少量を基準として求めた理論的メタン減少量に対する実際のメタン減少量の割合の経時変化(B)から、(A)と(B)を比較することでメタン脱窒微生物群の集積状況を考察した。現在、グラニュール系では硝酸塩減少速度は安定していないが、培養のある時点からメタン脱窒反応の割合が急激に増加している様子が認められた。河川庫泥を種汚泥とした培養系は、グラニュールの系に比べて硝酸塩減少やメタン消費が非常に小さく、メタン脱窒反応がどの程度生じているのか検証できていない。活性化因子として、硝酸塩濃度、pH、塩濃度、メタン分圧、培地交換などを検討したが、いずれもどのような条件が活性化に結びつくのか、各条件に対する速度変化が不規則であり、関連性が不明である。グラニュールを種汚泥とした培養系において、硝酸塩の減少とメタンの消費に約1日間のタイムラグがあり、硝酸塩の減少とメタンの消費が交互に緩急を繰り返すような現象が現在まで約40日間継続的に認められた。原因については明らかにできていないが、今後メタン脱窒微生物群の集積を一層進行させた状態で、窒素および炭素同位体を用いてメタン脱窒機構について解析する必要がある。
|