鉛は中枢神経系に有害で、精神遅滞や学習障害を引き起こすことが知られている。血中濃度とIQの低下には強い相関が見られることが知られているが、U.S. EPAは、鉛は骨組織への蓄積といった特徴があり、年齢による体内動態のため、従来のリスク評価手法では、リスク値を正当に評価できないとして、リスク値やRfD(参照用量)を公表していない。また神経毒性については、リスク評価手法が未だ確立されていない。 本研究では、特に幼児に着目して、鉛をはじめとする環境汚染物質の神経毒性発現のリスク評価方法の開発を目標とする。平成20年度は、酢酸鉛を神経細胞PC12に曝露し、タンパク質の発現変動解析を行った。その結果、鉛曝露により発現量の増加するスポットが8点、減少するスポットが20点、計28点のタンパク質を検出した。検出したタンパク質の中で8個のタンパク質に対し、MALDI-TOF/MS法により同定を行ったところ、これらが、cytochrome b5、membrane associated progesterone receptor component 2、MORF4 family-associated protein 1、heme oxygenase 2、Ras related protein Rab-1Bであることを確認し、神経毒性のバイオマーカー候補である可能性と考えられる。
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