研究概要 |
本研究は, 閉鎖性水域を水源とする浄水場で季節的に発生する凝集阻害の効果的な対応策を講じるための新たな凝集促進剤の開発を目標にしている. 本年度は, 藍藻類Microcystisから親水性物質を分離し, 親水性物質の構成成分を分析することによって, 親水性物質の特性についての考察を行った. 対象とする親水性物質は, 自然界中から採取したMicrocystisの莢膜成分とし, 細胞外に存在する莢膜成分の凝集阻害への寄与を, ジャーテストを行うことによって評価した. さらに, 凝集促進剤の素材選定として, キトサンの凝集補助効果について検討した. 結果として, 湖沼から採取したMicrocystisから莢膜成分を回収して分析したところ, 得られた莢膜試料は藻体1細胞あたりTOC : 1.1×10^<-8>(mg), 乾燥重量 : 5.2×10^<-8>(mg)であった. また, 莢膜を有する藻体と莢膜を除去した藻体でそれぞれ凝集試験を行った結果, 阻害能に差異が確認され, 藻体1細胞分の莢膜は1.2×10^<-7>(mg/cell)のPACを消費することが示された. 以上より, Microcystisの莢膜は凝集阻害能を有することが示唆された. キトサンの凝集補助効果については, 硫酸アルミニウムを用いたジャーテストにおいて, キトサン添加によって濁質の除去率が上昇したことから, 凝集補助効果を確認した. 次年度ではキトサンの添加率や実験条件について検討する.
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