研究概要 |
本研究は,閉鎖性水域を水源とする浄水場で季節的に発生する凝集阻害の効果的な対応策を講じるための新たな凝集促進剤の開発を目標にしている.本年度は,近年貯水池で増殖が確認されている藍藻類Anabaenaを用いて,その凝集阻害性の有無を確認することを目的とした.また,凝集助剤の素材として自然由来多糖であるキトサンに着目し,キトサンの凝集補助効果について検討を行った. Anabaena存在下における凝集処理では,細胞存在下において,標準懸濁物質を用いた場合と比較して約80%の凝集効率の低下が確認され,凝集阻害が発生した.また,Anabaenaが分泌した細胞外有機物のうち,溶解性成分を分離し,分離された有機物存在下で標準懸濁物質の凝集効果を調べた結果,有機物を含まない場合と比較して約43%の処理効率低下がみられた. キトサンの凝集補助効果の検討では,ポリ塩化アルミニウムとの併用において,キトサン0.5mg/Lの添加の場合で添加しない場合よりも凝集効果の上昇がみられた.さらに,上澄水の濁度2度を基準とした場合,キトサンとの併用によってポリ塩化アルミニウムの注入量を50%減少させても,一定の凝集効果を維持できることが観察された.このことより,浄水処理においては低濃度のキトサンで凝集効果を高めることが可能であることが予想された.来年度は,凝集阻害物質存在下におけるキトサンの凝集補助効果について検討を進める.
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