研究概要 |
今年度の研究では, クリプトスポリジウム属を検出するプローブを作成し, その染色性について評価した。作成, 検討した3種類のプローブのうち, クリプトスポリジウム属を広く検出可能な18S rRNA遺伝子の領域を用いたDIAG-CRYR1プローブでは, 良好な染色性が得られた。 また, 本プローブを用いたFISH法を現行の公定法である蛍光抗体染色法およびDAPI染色法と併用することについて検討を行った。両染色法を併用することば可能であり, これらの併用によって, 従来の試験方法では, 抗体の染色性(オーシスト壁表面の抗原性)と形態観察によって行われてきたクリプトスポリジウムの顕微鏡観察による検出と判別に, 遺伝的な一致性も加えること画でき, 顕微鏡観察によるクリプトスポリジウムの判別の精度を著しく改善できると考えられた。さらには, 顕微鏡観察による判別の精度は, 検査者の経験などの要因に大きく左右されるが, 本法を取り入れることで, より客観的な判別を可能にした。 一方で, 種あるいは遺伝子型識別用のプローブについてもその設計と染色性を評価したが, 今回試験したプローブは, C. parvum genotype2染色用に設計したものであったが, 良好に染色することはできなかった。新たな配列を有するプローブについて検討する, 染色の条件を変更するなど, この遺伝子型識別用プローブを用いた種や遺伝子型の識別法の実用化が次年度の課題であると考えている。
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