研究概要 |
Fc100MPa以上の超高強度コンクリート(UHPC)を用いた柱部材の曲げ性能の評価精度を向上させる解析ツールの整備を目的とし,UHPCの応力歪関係を実験的に求めた。柱部材では,断面内に歪勾配,軸方向にモーメント勾配が存在し,UHPCの応力歪関係に影響を及ぼすことが知られている。本研究では,設計基準強度130MPaのUHPCを用いた計6体のドックボーン型柱試験体を製作し,断面内に歪勾配を与え,コンクリートの曲げ圧縮で破壊に至る偏心圧縮載荷を行った。実験変数は横補強筋量とし,補強筋比はp_w=0%, p_w=0.75%, p_w=1.30%の3種類とした。また,同一配筋とした試験体を2体ずつ製作し,各試験体のばらつきの影響も検証した。 載荷実験では,1体の試験体を除く5体の試験体でコンクリートの曲げ圧縮破壊が起こり,歪勾配の影響を受けたUHPCの応力歪関係が測定できた。測定した応力歪関係から,横補強筋量の増大に伴い,UHPCの最大応力や曲げ圧壊時の歪が大きくなる傾向があることが分かった。また,同一配筋とした試験体でも,横補強筋が早期に破断した試験体では圧縮靭性が乏しかったが,大変形時まで横補強筋の破断が起こらない試験体では,高い圧縮靭性を示しており,UHPCの圧縮靭性が横補強筋に左右されることが分かった。実験結果と,既往の研究で提案された算定式を用いて求めたUHPCの応力歪関係を比較した。大変形時まで横補強筋の破断が起こらない試験体については,実験の方が算定式よりも最大応力後の下り勾配が小さく,高い圧縮靭性を示した。既往の算定式は歪勾配を持たない柱試験体に対して提案されたものであり,実験結果と算定結果の差が,歪勾配の影響によるものである可能性がある。ゆえに,今回の実験データは,今後,歪勾配の影響を定量的に評価する上で重要なデータになると考えられる。
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