本研究の目的は大規模堆積盆地(大阪平野及、濃尾平野など)における海溝型巨大地震時の強震動予測の高精度化であり、そのために、地下構造モデルの高精度化、やや短周期地震動の予測のための統計的グリーン関数法の高精度化を行った。 平成22年度は、昨年度に引き続き、大規模堆積盆地の地下構造探査および地下構造モデルに関する情報の収集を行い、地下構造モデルの構築方法についての検討を行った。また、既存の観測地震記録の収集を行い、観測地点の盆地内での位置、震源の規模・方向・深さの違いによる地震動特性の違いについて分析・検討を行った。次に、2007年新潟県中越沖地震について、地下構造モデルを構築し、3次元差分法を用いて地震動シミュレーションを行い、海側から到達する地震動の陸域での成長過程や、地下構造の影響についての検討を行った。検討の結果、柏崎刈羽原子力発電所内における観測波形(速度最大振幅など)の違いなど、周期1秒以上の観測地震動を良く再現でき、地下構造の3次元的な変化が観測地点ごとの波形の違いに反映されていることを認した。次に、やや短周期地震動の予測の高精度化ために、観測記録を用いて統計的グリーン関数法の計算に周期に依存したエンベロープを取り入れる事を試みた。この手法により、地震動の短周期成分は早く減衰し、長周期成分の継続時間が長くなるという現象を再現できるようになった。最後に、大阪平野の北部地域を対象として、仮想震源による地震動評価を行った。一般に堆積盆地内では、震源からダイレクトに到達する直達波の他に、地表付近を伝播する表面波も励起されるが、評価の結果、短周期地震動による表面波の励起には表層地盤(S波速度200m/s程度)から地震基盤(S波速度3000m/s程度)までの地盤構造の不整形性が影響することが分かった。 また、国内の学会及び研究発表会において研究で得られた成果についての発表を行った。
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