研究概要 |
本研究では,鋼構造露出柱脚に適用するために考案された新しい鋼管ダンパーの開発を目的として,今年度は,以下の項目について検討し,それぞれ結論を得た. (1) 変形性能(エネルギー吸収性能)を確保するための設計条件について検討するために,29体の部分要素実験を追加で実施した.これにより,(i)径厚比が12程度までで長さを座屈波長1つ分程度としておけば,耐力を概ね保持したまま一定の変形性能が得られることが確認された.さらに,(ii)径厚比が8程度までで長さを座屈波長2つ分程度にすれば,耐力低下することなく(i)の場合に比べ2倍程度の変形性能が得られること,(iii)(ii)の条件に加え,中央部にリブを施せば,中央部での破断を抑制し,上述の変形性能が安定して得られやすいことが,新たな知見として得られた. (2) 鋼管ダンパーを組み込んだ露出型柱脚の構造実験を行い,その基本的な構造特性を確認することを試みた.しかし,パイロットテストと位置づけた実験において実験実施上の不具合が生じ,不具合の調査に時間を要したため今年度は有意な結果が得られなかった.次年度に引き続き検討する予定である. (3) 鋼管ダンパーを適用した露出柱脚の復元力特性は,複雑な履歴性状を示すと予想されるため,この特性を数値解析で表現することができる解析モデルを提案した.上述の実験に不具合が生じたため,実挙動との対比は未検討であるものの,同解析モデルによる数値解析によって,その復元力特性を確認した上で,骨組レベルの地震応答解析も数例実施し,本鋼管ダンパーを適用することによる地震応答の低減効果についての検討を開始した.
|