研究概要 |
沖縄は高温・多湿の厳しい腐食環境下にあり,かつ島嶼環境という地理的条件のため,RC建物が塩害を受けやすい。加えて,塩分総量規制以前の海砂を大量に使用したRC建物も数多く存在する。本研究では3種類のコンクリート調合を用いて,かぶり厚さ30mmを有する大型RC柱(40cm角の正方形断面)の自然暴露試験を行い,塩害損傷が耐久性能と耐震性能に与える影響を照査することを目的とする。 水平加力実験での破壊状況の概要を以下に記す。暴露期間が短いRC柱試験体では,水平加力により柱中央に大きなせん断ひび割れが生じ,暴露期間が長く,また,鉄筋の腐食量が多いRC柱試験体では,主筋に沿ったひび割れが生じた。各試験体のひび割れ発生状況は暴露期間が長期間にわたるほど,加力時に生じるひび割れは暴露試験時に生じたひび割れに向かって進展し,その後,繋がる傾向にあった。コンクリート強度の低いLシリーズでは特に帯筋の腐食が激しく,実験後の鉄筋の腐食調査ではRC柱試験体の柱頭部と柱脚部のコンクリートは容易に除去できた。 本研究で得られた主な結論を以下に示す。(1)塩害で損傷したRC柱の最大耐力と変形性能を予測するには質量減少率で求めた平均断面積を用いるのが効果的であり,支障がないことがわかった。このことは,腐食した鉄筋の降伏荷重から求めた孔食部分の断面積を用いた場合と比較検討することにより推定できた。(2)暴露期間が6年を経過したNとLシリーズのRC柱では水平耐力の低下より,靭性指標や累積エネルギー吸収量の低下が大きい傾向がある。(3)フライアッシュIII種を用いたRC柱は塩化物イオンが浸透しにくく,その結果,鉄筋の腐食劣化も進行が遅くなった。すなわち,耐久性能が普通コンクリートを用いたRC柱より優れ,かつ,耐震性能の劣化も遅延することが一定軸力下の正負繰り返し水平加力実験で明らかになった。
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