研究概要 |
沖縄県は高温・高湿の亜熱帯環境という厳しい腐食環境下にあり,加えて島嶼環境という地理的条件および台風などによる飛来塩分によりRC造建物は塩害を受け易い。また,1972年の沖縄県の日本復帰前後には十分に洗浄されていない海砂が多量に使用されたため,鉄筋腐食に伴うRC造建物の塩害が懸念されている。上記の懸念を背景に,これまで琉球大学工学部山川研究室では塩害を模擬した電食,および沖縄の西海岸で自然暴露した縮小試験体を用いて塩害により損傷を受けたRC柱の耐久性能と耐震性能の関係を解明することに注力してきた。しかしながら,縮小試験体ではかぶり厚さや,主筋や帯筋の鉄筋サイズも縮小されてしまうため,RC柱の耐久性能と耐震性能を追求する場合には実際のRC柱に近いかぶり厚さや鉄筋サイズが必要であると考えられてきた。 他方,地球環境の維持・保全のため,持続可能な循環型社会の形成に向けて廃棄物のリサイクルが進んでおり,沖縄県内の火力発電所で産出される石炭灰(フライアッシュ)を有効活用したRC構造物の施工報告も行われている。 このような中にあって,実規模相当のRC柱を使用して自然暴露を行い,材料および構造的に耐久性能と耐震性能を同時に追求した研究は見当たらない。 本研究では実規模相当のRC柱(400×400×1600mm)の自然暴露試験体を用いて以下を解明することを目的とした。(1)自然暴露期間,コンクリート強度,塩分浸透性状の関係を明らかにし,併せてフライアッシュ混入の耐久性に対する有効性を示す。(2)耐久性調査と同時に,自然暴露大型RC柱の水平加力実験を行い,耐久性能と耐震性能の関係を明らかにする。
|