本研究では、伝統構法木造建物の構造設計を限界耐力計算で行う際に用いられる各種耐力要素の復元力特性のうち、特に、土塗り壁の復元力特性について、根拠となる実験データをさらに充実させることを目的とした。壁幅が910mm(1P)、1820mm(2P)、2730mm(3P)、455mm(0.5P)の無開口土塗り壁について、各1体のせん断加力実験を行い、荷重と変形の関係、壁面や接合部の損傷経過を記録した。柱仕口は伝統的な長ほぞ込栓接合として、鳥取県内の大工・左官による通常の工法での作製を依頼し、この地域の工法が土塗り壁を有する木造軸組架構の耐力特性に与える影響を検討した。 5月中に試験体仕様を確定して製作を始め、10月に中塗りを行った後、土塗り壁の乾燥期間を2ヶ月以上確保し、2009年1月から3月にかけて実験を行った。実験の結果、他地域の工法による土壁同様、最大耐力は壁幅に比例する傾向にあること、および、耐力の増大に伴い柱脚が引き抜き損傷を生じやすいことが明らかとなった。また、竹小舞の間隔が、壁土のひび割れ損傷や剥落の生じやすさに影響を大きく与える傾向が観察された。 当初、同一仕様で2体以上の試験体について実大実験を行う予定であったが、竹小舞の仕様により損傷状況が大きく影響を受けることが明らかとなったため、今後の実験では、試験体仕様を改善しながらバリエーションを増やすこととして、引き続き実験を行うよう準備を進めている。
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