研究計画に基づき、今年度は、雪害発生の要因分析と建築物の雪害リスク評価手法構築に向けた基礎的検討を行った。雪害発生の要因分析では、被害統計資料および新聞記事の精査、文献調査により建築物で起きる雪害に関する資料整備と内容把握を行った。その結果を基に、建築物で起きる雪害要因を、気象的要因(降雪量、風速等)、建築的要因(形状・ディテール等)、人的要因(高齢者等)に分類整理した。 雪害リスク評価手法の構築では、気象的要因による雪害について基礎的検討を行った。特に吹雪を要因とする雪害に着目し、その評価手法について検討した。建築物における吹雪による雪害には、雪の吹き込み、吹きだまり、雪庇、着雪などがあり、その発生条件を既往研究にもとづき整理した。発生条件についてみると、例えば雪の吹き込みは日平均風速が2m/sを超える場合、吹きだまりについては同4m/s、雪庇については日平均風速2m/s以上かつ日降雪量10cm以上で発生する。このことから、吹雪による雪害のリスクの評価に関して、対象地域の気象条件を調べ、当該現象が発生するしきい値をどのくらいの割合で超えるかを算出することにより、吹雪による雪害リスクを定量化できることを見出した。更に、このしきい値を用いて、北海道の諸都市を対象に吹雪による雪害リスクを試算した。 建築物の雪害リスクを評価できる手法を構築することにより、雪対策費の費用対効果の算出が可能になり、雪害による被害軽減や雪国の社会資本整備における意思決定に貢献できると考える。
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