研究概要 |
前年度までの検討に引き続き,大阪市から東大阪市までの都市化した地域を対象として,大阪湾周辺の海岸付近から生駒山に近い内陸へかけた3箇所の鉄塔に気象測定機器を設置し,都市上空気象データ及びその直下の気温の連続測定を実施した.測定結果の上下温位差と上空風速を用いて地上付近から上空へ伝達される接地境界層の顕熱流の熱伝達率を算定した.この値を根拠としてヒートアイランド対策技術を導入した場合の気温低下量を計算し,屋上緑化やクールルーフ等の日中に効果を発揮する対策技術と,人工排熱対策などの夜間にも効果が期待される技術の簡易な相互比較の方法を提示した. 上記検討結果に基づき,ヒートアイランド現象緩和効果と外部空間の温熱環境改善効果(パブリックベネフィット)の視点よりヒートアイランド対策技術の性能を簡易に評価するツールを作成した.ユーザーが日射反射率ρまたは蒸発効率βを選択すると,日中13時と夜間21時の表面温度,顕熱流,気温の変化量が算出される.併せて変更されるグラフにより,時刻毎の変化の様子を確認することが出来る.また,人体の日射反射率が0.3と0.6の場合の日中13時における温熱環境指標SET*の計算結果が示される.ユーザーの利便性の観点からは,日射反射率ρ及び蒸発効率βの信頼できるデータベースを構築する必要があり,日射反射率に関しては測定方法や評価方法の整備が進んでいるが,蒸発効率に関しては今後の課題であると考えている.
|