研究概要 |
最適拡声レベルの予測手法を検討するにあたり,21年度も前年度と同様に,残響音場における最適ラウドネスがどのような心理的メカニズムで決定されるかを検討した。具体的には,残響音の空間特性の違いに着目し,空間特性の違いによって残響音が最適ラウドネスに与える影響がどのように変わるかを検討した。残響音の空間特性は,左右の耳に提示される残響音の相関の強さを示す両耳間相関度をパラメータとして変化させた。聴感実験の結果,以下を明らかにした。(1)被験者により個人差はあるが,残響時間が長いほど最適ラウドネスが小さくなる傾向がみられ,この傾向は残響音の両耳間相関度が低いほうがより顕著であった。(2)残響時間が3秒程度の音場では,被験者によらず残響音の両耳間相関度が低い音場が高い音場よりも最適ラウドネスが小さい。以上の実験結果と,両耳マスキングレベル差や既往の研究結果を合わせて考えると,最適ラウドネスは残響音のうるささの影響を受け,残響時間が長い音場ではそのうるささを低減するために,より小さいラウドネスが最適と判断されると推察される。 また,例えば,電車がトンネル内に侵入するときの車内のように,暗騒音レベルが大きく変動する場合,拡声レベルを自動調整するシステムが実用化されているが,急激な拡声レベルの変化は,不快感をもたらす可能性がある。そこで,不快感に着目して最適な拡声レベルの調整パラメータを明らかにするための聴感実験を行った。その結果,実験に用いた条件の範囲では,変化前の騒音レベルが50dB及び60dBの場合,騒音レベルの変化量に関わらず,拡声レベルの増幅量5dB,立ち上がり時間800msが最適であった。
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