研究概要 |
本研究は室内での存在可能性ならびに人体影響が懸念されている超微粒子・有機エアロゾルSOAに着目し, その生成・凝集プロセスを解明すると共に, 居住者の暴露量を評価するために必要となる総合的な室内空気環境予測法の開発を行うものである.本年度(20年度)は研究計画に従い, (1) 酸化的環境下における気中での化学反応に着目した研究を実施した. 1. ダクト型実験装置の制作と動作検証 気中でのオゾン・VOCの化学反応ならびにSOA生成を測定するため, ダクト型実験装置を制作し, 清浄空気に実験ケースに応じてオゾン、VOCを混入させ, 一様流中での濃度低下量を測定した.各対象物質の濃度変化はダクト型模型のInlet位置から05m間隔で設置した濃度測定用サンプリングロにて測定することで, 実空間に相当する移流が存在する環境下において濃度履歴, 粒径分布履歴の測定が可能となることを基礎実験を繰り返すことで確認した. 2. 気相化学物質の反応量ならびにSOA生成量に関する基礎実験 室内環境中でのSOA生成が指摘されている代表的な気相の化学物質としてオゾンとリモネンの組み合わせがある。オゾンならびにリモネンをダクト型実験模型のInlet位置より供給し, ダクト下流側に設置された複数のサンプリングロにて対象化学物質の濃度減衰量ならびにSOA生成量を連続的に測定した. リモネンの他, トルエン, ノナナールにおいても実験し, オゾンとの酸化反応量の差異を定量的に確認した. 3. SOAの固体壁面沈着ならびに凝集プロセスに関する基礎実験 上記3で実施する実験にて, SOA生成量の測定に加えダクト型実験模型の下流側での粒径分布変化を継続的に測定することで、生成SOAの凝集現象を定量的に把握するための基礎データの蓄積も行った. 対象化学物質濃度を2段階で変化させ, 複数の実験を実施し, 反応モデル, 粒子生成モデル構築のための詳細な基礎データを蓄積した. また, 上記2ならびに3の実験で得られた基礎データを基に, 基礎的な反応モデル定数である2次反応速度定数K_bならびに気相-エアロゾル相の変換定数であるPartition Coefficientrの推定を実施した.
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