研究概要 |
オフィスにおける照明用エネルギーは、全消費エネルギーの約25%を占めており、その削減が喫緊の対策として求められている。白色LEDの実現により、LEDの一般照明としての利用が期待されてはいるものの、その分光特性による視覚影響についてはあまり検証されていない。本研究課題では、新規一般照明用光源の代表例としてLEDを取り上げ、従来、一般照明用光源として使用されてきた蛍光ランプとの分光分布の違いがVDT作業による視覚疲労に与える影響について、被験者実験を行い検討した。視覚疲労は、焦点調節応答時間と臨界融合頻度の二つの生理指標ならびに疲労に関する自覚症状の主観申告により評価した。実験条件は、光源の種類3条件(昼白色蛍光ランプ,昼白色LED,電球色LED)、机上面照度2条件(3501x, 7001x)の組み合わせ6条件とし、被験者6名は各条件3回ずつ体験し、評価を行った。 今回検討したLEDについては、VDT作業前後での焦点調節応答時間の変化率、臨界融合頻度の変化率とも蛍光ランプとの有意差は確認されなかった。また、疲労に関する訴え、光環境の評価についても、光源の種類や設定照度による違いは明らかにならなかった。 今回の実験では、労働省(現厚生労働省)ガイドラインに基づき、1時間以内の作業負荷による視覚疲労について検討したが、実際には、一連続のVDT作業時間は平均2.2時間との調査結果もあり、今後、長時間労働による視覚疲労や長期間の曝露による影響についても確認する必要がある。
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