行政、経済活動の中枢を担う都市部における災害時には、直接被害と共に大きな間接被害が発生することが予想され、間接被害の多くは建物の機能不全に起因する。非常時において人命や建物を直接的に守ることは当然最優先されるべき事であるが(直接被害の軽減)、間接被害を回避することの重要性も忘れてはならない。災害時においても様々な組織や建物の機能が維持され、業務が継続されるということは、被災地域や被災者の生活を守り、迅速な復旧を確実に推進していくために欠かせないものとなるからである。例えば災害対応拠点となる行政庁舎や病院に加えて、公益企業や物流業者、データセンターや金融機関などの機能が維持されることが、被災後にどれ程大きな力になるかを忘れてはならない。 阪神・淡路大震災やアメリカ同時多発テロ以降、危機管理手法として事業継続計画(BCP)や事業継続マネジメント(BCM)が注目を集め、現在関連の国際標準規格化(ISO)の検討やガイドラインの整備が進んでいる。しかしながら、建物システムに関する意識は低く、重要業務拠点・重要生産拠点となるその重要性に比して対策の必要性が見落とされているのが現状である。特に非常事態が発生した際の施設管理方策、また事後における状況の科学的検証方策については方法論の早急の確立が求められている。 そこで著者らの研究グループではBC (Building Continuity)という新たな概念を創出し研究を進めている。自然災害や事故、事件などの非常事態が発生した際においても、建物の機能不全を回避して、建物の適切な機能維持を行うという考え方である。今年度は、Building Continuityを遂行できるような建物管理方策のあり方に焦点をあてて、具体的な想定シナリオの作成とデモンストレーションの実施を行った。その結果は映像教材・資料の形でまとめ、学会を通じて広く頒布予定である。
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