本研究は、地区計画と自主ルールの連携を通じた住民主体の住環境管理の実態を把握し、その有効性と課題を明らかにすることを目的としている。初年度にあたる20年度は、既存研究や報告書などから該当する事例の情報収集を行うとともに、このような住環境管理が可能となるための制度枠組みや必要な支援策の検討を行った。具体的には、以下のような調査・分析を実施した。 1.収集事例によると、住民組織による主体的な住環境マネジメントを可能とするには、ルールの策定から運用までの様々な段階において、行政や専門家によるきめ細かな支援が必要であることが明らかになった。そこで、政令市及び東京都下の自治体を対象として、まちづくり支援制度の有無及び仕組みを網羅的に調査し、先進的なまちづくり支援の仕組みと実績を有する自治体として、広島市、神戸市、大阪市、札幌市、横浜市、世田谷区、練馬区、国分寺市、狛江市の9市区を抽出した。 2.これらの9市区へのヒアリング調査から、住民のまちづくりの発意を実際のルール策定へとつなげるためには、まちづくり活動の熟度に応じた段階的な支援が重要であることが明らかになった。具体的な支援内容としては、ルール策定段階においては、合意形成促進のための専門家による支援やルール決定手続きのための専門知識を有する作業に対する専門家の補助や行政の代行、先行する類似事例の紹介やそれらの事例にかかわる住民との情報交換、ルール運用段階においては、活動継続と周知徹底のための情報提供や専門知識の提供などが有効であることが明らかになった。
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