本研究は、地区計画と自主ルールの連携を通じた住民主体の住環境管理の実態を把握し、その有効性と課題を明らかにすることを目的としている。これまでの調査成果をもとに、国土交通省土地・水資源局土地政策課の調査研究会「地区レベルのまちづくりルール形成普及推進調査委研究会」に参加し、『地区まちづくりルール普及・推進ガイドブック』のとりまとめを行った。また東京大学グローバルCOE都市空間の持続再生学の展開(D部会)・まちづくりの仕組みづくり研究会公開フォーラム『市民提案による都市計画の再構築』や学会及び自治体の各種委員会等で調査成果の発表や今後の課題や方策の検討を行った。 本研究の調査を通じて、住民のまちづくりの発意を実際のルール策定へとつなげるためには、まちづくり活動の熟度に応じた段階的な支援に加え、地区の市街地や景観特性に合わせ、地区計画に限定しない多様な仕組みを活用した住環境管理の可能性を市民に十分伝える必要があることが分かった。またルールの運用過程においても、多様なルールの特徴を活かすために市民が積極的に運用に参加することや、状況の変化に応じて動的な見直しを可能とする体制づくりが必要とされていることが明らかとなった。 本研究では主として住宅地での住環境管理に焦点を当てて分析を行ったが、様々な環境マネジメントの仕組みを活用した市民主体のまちづくりは商店街や工業地等でも必要とされており、多様な市街地を想定した市民主体の環境管理方策の検討が、今後の研究課題としてあげられる。
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