(1)欧州における地域開発と空間計画の実態把握 (1)東欧諸国における都市・地域政策の展開プラハ首都圏では、スプロールや環境問題、ブラウンフィールドの再生、歴史的市街地の保全、さらにEU加盟による国際競争力の向上が課題となった。これらの問題に対処するため、戦略的アプローチに基づくプラハ市戦略計画が策定され、長期的な道筋のもとでの土地利用計画やEU基金による地域政策が関連付けられながら推進されている。 旧東ドイツ・ライプツィヒの都市政策に関する調査を行った。人口流出や雇用減に対処すべく、都市縮退政策がとられてきたが、近年、地区別・部門別に行われてきたプロジェクトの効果を高めるため、SEKo(統合都市開発戦略)を策定して部門別計画を傘下に位置付けるとともに、都市政策を市民も参加して議論するプラットフォームを設立して推進している。 (2)広域計画とガバナンス ドイツ・ルール地域における現地調査を行った。ここでは、多核的都市圏における広域連携を推進するため、IBAエムシャーパークプロジェクト等によるプロジェクト先導プロセス、ランドスケープを軸とした広域計画・ガバナンスの展開プロセスが明らかとなった。 さらに、2010年の政権交代に伴う英国における地域計画制度の変容について調査を行った。ローカリズムの推進に伴い、地域空間戦略は官僚的であるとして廃止され、コミュニティを重視した制度へと改革する動きが見られた。一方で、経済発展や気候変動対策における広域計画の必要性も指摘され、都市地域圏がその単位として注目されている。 (2)研究のまとめ これまでの研究成果を踏まえて、研究のまとめを行った。制度変容のプロセスという点では、欧州統合の進展とともに、経済発展や気候変動対策における空間計画の役割が高まっていること、「地域」の重要性が高いことは同様であるが、形式的な圏域から機能的な圏域に基づく柔軟な連携がみられること、計画論として、長期的なビジョンの共有のもとで柔軟な政策をとる統合的かつ戦略的アプローチがとられていること、そのアプローチを支える上で、コミュニティや市民参加、経済・環境団体などの参画が求められていることが明らかとなった。これらの知見は、日本における広域地方計画を実効あるものとするために示唆を与えるものである。
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