本研究では、都市における空間現象のなかでも、特に危機的現象の把握のための、発生地点の空間的傾向に着目した分析手法を開発することを目的としている。 昨年度に実施した、過去の発生状況を表す密度分布を、限られた少数の点分布からなる未知の密度分布で近似することにより、現象の発生地点の分布パターンを推測するための分析手法の検討をふまえ、本年度は、まず実際の都市や地域に発生する現象に対する本方法の有効性の観点から検証をおこなった。サンプルデータを用いた計算をおこない、最適化のアルゴリズム改良などにより、分析方法としてより汎用的なものとして完成させることを目指した。その結果、過去の発生地点の密度分布と、それを近似する少数の地点の密度分布との積分二乗誤差の最小化問題において、数十のオーダーの未知の各地点の座標値について収束解が得られることがわかった。これにより、点分布を正規分布のような連続関数を用いたカーネル法による密度分布であっても、計算実行の面から分析が可能であることが示された。ただし、当然のことながら推測する点が増加するにつれて、より初期値に依存する局所解となる傾向があるため、元の点分布の状況をふまえた分析が要求される。また、推測可能な地点が数十というオーダーで十分であるかという議論があるが、そもそも少数の地点で近似するという意義から考えると、元の発生地点はその何倍、何十倍の数になるであろうことから、対象とする空間範囲にもよるとはいえ、都市や地域に発生し得るイベントの多くが適用範囲内にあると判断できる。 さらに、分析結果の表現法として空間パターンの視覚的表現の検討をおこない、危機情報の伝達において、点密度分布の等高線や濃淡図による表示が有効であることを確認し、本研究成果の活用可能性を吟味した。
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