本研究は、近年みられるようになったNPO等の地域組織による公共空間の管理・運営活動に着目し、その責任・権限範囲に関する知見を得ることを目的としている。公共空間の管理運営については、安全の確保と多様で豊かな利活用とのバランスが問題となる。また特定の地域組織による公共空間の管理は、いかにして地域の様々なニーズに対応し、公共性や公益性を担保するのかが課題となってくる。このような視点から、本年度は世田谷区において先進的な公共空間の管理運営を行っている地域組織に対してヒアリング調査を実施した。その結果、管理運営行為の詳細および管理運営を行っている公共空間のエリアや占有物等の管理対象物件の実態を把握した。また管理運営の責任範囲・権限範囲の実態を把握し、管理協定を締結していない事例や責任体制を明確にしていない事例では、多様な利活用の実施や行政への提案など裁量の広さを活かす活動を展開する一方で、日頃から安全や公平性に対して十分に配慮している実態が明らかとなった。また行政との関係や周辺地域住民・利用者との関係では、周辺地域住民や利用者への活動の広報や情報提供を積極的に行うと同時に、公益的な活動となるよう配慮している実態も明らかとなった。以上の調査結果を整理し、公共空間の管理運営を行う上での一般的留意事項、責任・権限に関連した安全や公平性等の問題への配慮事項、行政や周辺住民・利用者との良好な関係を構築するための留意事項について、知見を得た。その成果は平成22年度において学会論文への投稿等により公表する予定であり、準備を進めている。
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