本研究は、日本の伝統的な建造物とその周辺環境に対して、それらの一体的な景観保全を行うために、システムの整備およびその現状の評価や整備後の評価を行える環境指標を導出することを目的とするものである。 本年度は、寺社や伝統的集落等とその周辺環境が一体的に保存されている地区にかんする代表的な類型について、気候区分別に概要の資料を収集し整理を行った。なお、愛媛県、香川県、徳島県、高知県において現地調査を伴う資料の収集を実施した。 さらに、断層に基づく環境指標と神社の立地景観について長野県伊那市を対象として現地調査を行った。その成果として、断層周辺の神社の頻度分布から、神社は断層に沿うように分布する様相を呈していることが示され、また地形地質的要素が及ぼす影響からは、約7割の神社が異なる地質との境界付近に立地することが明らかとなった。そこでは神社が立地する地質として、災害危険区域との関連から注目すべき地質を指摘することができた。今後、その土地固有の自然との関わり方が現れた文化的な景観の持続可能性を論じること、かつ向上させることができるものと考えられる。この研究成果は、平成21年度日本建築学会学術講演会において発表予定である。
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