本研究は、日本の伝統的な建造物とその周辺環境に対して、それらの一体的な景観保全を行うために、システムの整備およびその現状の評価や整備後の評価を行える環境指標を導出することを目的とするものである。 本年度は、昨年度に引き続き、寺社や伝統的集落等とその周辺環境が一体的に保存されている地区の代表的な類型について、気候区分別に概要の資料を収集し整理を行い、資料の収集を継続した。 さらに、断層に基づく環境指標と神社の立地景観について長野県伊那市を対象とした研究発表を行った(平成21年度日本建築学会学術講演会)。さらに本年度は、神社の境内が有する植生や周辺の集落にみられる居住環境形成にかんする現地調査を行った。 また断届と神社の立地相関を探るにあたり、断層がしばしば地震を引き起こすことに留意することで、土地の性質から神社の景観について新たな考察を行った。過去に起きた地震に対する当時の人々の認識と、神社の立地との関係に見られる特質に着目し、当時の人々の知識の枠組みについて見当を試みた結果、近代以前の地震に対するイメージが抽象的なものにとどまらず具体的な戦場のつながりのイメージを喚起させるものとしても理解されていたことを示した。さらに地震認識と神社の立地との関係をみる上で、断層付近の「軟弱地盤」に立地する神社の存在も無視できないことを指摘した。
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