本研究では、神社及び集落の立地景観について、周辺の断層や土地本来の気候植生等に基づく自然環境条件との相関を明らかにすることによって、建築と周辺環境による景観を一体的に保全していくために、そこにある土地の潜在力として考慮すべき環境指標について整理検討を行った。断層付近の神社に着目すると、異なる地質の境界付近に立地するものが多く、中でも「軟弱地盤」に立地する神社の存在は無視できないことを指摘した。神社が有する背後の緑地とともに一体的に保全されることにより、土地の性質を示すランドマークとして評価できる可能性がある。気候や植生に関しては、建築と周辺環境の一体的な保全が試みられている伝統的建造物群保存地区を取り上げ、暴風雨に対する石垣など職人技術と結びつき維持管理が蓄積した景観のみならず、崩壊と再生を前提としながら所有者自身がそのつど維持管理をしてきた建造物からなる地域の景観があり、いずれも環境の指標が見出せることを示した。維持管理そのものが土地本来の環境指標の認識と継承に繋がることから、景観保全にあたっては、失われつつある後者の継承手法を含めた保存計画が望まれる。
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