研究概要 |
本年度は,昨年度に構築した京都市伏見区のGISデータや基礎的な分析モデルを中心に発展させ,本格的な分析作業を行った. (1) 監視性モデルの改良 監視性モデルにおいては,壁面開口部の影響を考慮した建物対空間の監視性を考慮できるようなモデルへと改良した.さらに街路の全方位画像から開口部や塀などを読み取りGISデータ化した. (2) 犯罪発生場所に特有の空間構成ルールの抽出 Emergence Patternsなどの希少ルールを発見する相関ルールや,各種の分類アルゴリズムを用いて,犯罪発生に関係の深い空間構成ルールを抽出し,チャンス発見的な見地から相関ルールのネットワーク可視化を行い,それらの重要性を評価した. (3) 空間構成から見た犯罪発生予測モデルの構築 分類モデルを用いて任意の地点の犯罪発生を推定するモデルを構築した.犯罪が起こる場所は,空間の中で限られており,その発生場所をできるだけ高い精度で予測するモデルを作るために,Emergence Patternsを拡張したCAEPと呼ばれる新しい分類モデルを採用した.その他の分類回帰モデルとして,ロジスティック回帰やBoosting型の決定木とコスト考慮型学習法を組み合わせた学習も行った.構築されたモデルから各地点の犯罪発生分類を求めて犯罪マップなどと比較し,特に局地的な相違点に着目した. (4) 考察とまとめ 得られた空間構成ルールや犯罪発生地点の分類の分析から,空間構成と犯罪発生の関係を注意深く考察した.その結果,相関ルールとしては,開放性が中程度の空間で,ひったくりが起こりやすいことがわかった.また,住宅地では用いた空間構成ルールで比較的うまく犯罪発生が説明できたが,繁華街では分類精度が低く,空間的因子よりも偶然性や人の流れがより強く作用していることが示唆される結果となった.
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